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2008 / 04 / 04 ( Fri )
※読む前に。《 》←この中の文字は前の漢字のふりがなです。元データが欲しい人はメールなりで連絡下さい。後半に出てくる便箋は封筒に脳内変換してください。それと今回は前回よりもはっちゃけてるので、どん引き・取り残されにはお気をつけてご覧下さい。
季節は冬、とある学校の朝。とある水泳部がプールで朝の練習……朝練ってやつをやっている。 冬の朝にプールで練習とは言うが、別に寒中水泳をしてるわけではない。 この学校には室内温水プールなる生意気な設備があると言うだけの話。 ただそれだけの話。 あぁ、本当に生意気だ。 「っはぁ!! ……っ、はぁ……はぁ…………。っ先輩っ! タイムどうでした?!」 今まさに二百メートルの距離を全力で泳いできた少年は手ごたえを感じていたのか、初めて親の前で暗記した九九を披露した子供のように、すでに「褒めて! 褒めて!」の体勢だ。 しかし、少年が話かけた冴えない顔をした男の表情はその男の顔と同じく、冴えないままだった。 「ダメだな。のびるどころか若干落ちてる」 「うっは! ……ダメかぁ〜〜」 少年が水から出てきた時の勢いはお空のお星様と化し、軟体動物のように体からは力がぬけ、くた〜っとなった。 「むぅ……君は確か佐藤君……だったか?」 そんな軟体動物に、顔立ちの凛とした美人か不細工かで問われれば間違いなく美人に分類されるであろう……そんな女性が話しかけた。 「うはっ! ぶ、ぶちょ……! えっと、そうです!私めは佐藤で間違いないであります!」 軟体動物はその女性に話しかけられると、ピーン! と、背筋に一本鉄筋を入れられたような軍人になった。 「まぁ、そう硬くなるな。ところで私が見たところ君は今、タイムが伸びなくて困っていたように見えたのだが……どうかな?」 美人は微笑みながら軍人を諭し、人差し指を立てながら尋ねた。 「は、はいっ! そうであります!」 硬くなるな。と言われたが、軍人はむしろさらに硬く、そして堅くなり、ついでに返答時には敬礼までつけてしまった。 こうなっては言っても無駄と判断したのか、はたまた元からどうでもよかったのか、美人は気にすることもなく微笑んだ。 「ならばだ、一つアドバイスをしてやろう」 「はいっ! よろしくお願いもうしあわっすすわぁ……っ、です!」 軍人が放った言葉は緊張のあまりに噛むわ言葉はおかしいわとさんざんだったが、美人は小気味の良い返事を聞くと「よろしい」とばかりの得意そうな顔をし、腕を組んでアドバイスの姿勢(?)を取った。 「街中でタバコをポイ捨てしている人を見かけたらその捨てられた吸殻を拾い、「はい、コレ落し物ですよ」と言って渡すと良い。これを一日一回すればタイムが伸びる事間違いなしだ!」 「はいっ! 了解であります!」 「うむ、良い返事だ。ではな」 美人は再び軍人のハキハキした返事を聞くと上機嫌に頷き、片手をヒラヒラさせて去っていった。 美人が去ると軍人はまたしても全身の力が抜け、軟体動物……色の事も考慮するとまさにタコのようになった。 「やっぱ部長いいなぁ〜。綺麗だなぁ〜……っていうか部長いいなぁ〜〜〜」 タコが体をウネウネさせながら先ほどの余韻に浸っているが、その横では一連の軍事会議を見ていた冴えない顔の男がタコ状態の佐藤と、先程の会議の内容に呆れていた。 「しっかしまぁ……お前本当に鳳のこと好きな」 「もちろんっすよ! だって美人じゃないですか! 美しいじゃないですか! 美しい女性はそれだけの理由で好意を持つに価値があるんですよ!」 「いや、まぁ……否定はしないけどさぁ……」 男はただでさえ冴えない顔がさらに冴えなく見えるような表情にし、頭をポリポリ掻いた。 「あいつだけは……やめとけ」 付き合いは一年にも満たないが、ある程度少年の性格を把握していた彼は、こんな事言っても無駄なんだろうな〜。とか思いつつも、本当にオススメできないので一応忠告するつもりで佐藤に言った。 「うはっ! そのセリフ最近読んだ小説の主人公も言われてましたよ! なんでも相手の女のほうが奇人変人の最先端をいく奴だから……とかで!!」 「まぁ俺が止める理由も……そういうことだ」 「でもでも、鳳さんってば宇宙人だの超能力者だの未来人だの言わないじゃないですか! しかも美人だし!」 男は思ったとおりすぎる佐藤の反論にため息をつく。 「でもだぞ、女子体育の時間に四十分間真顔 で変なおじさんを踊り続ける奴だぞ? 「地球の自転を私中心に変えたい」とかで帰宅までの6キロ近い距離を側転だけで帰った事のある奴だぞ? 学校であろうとトイレで用を足す時は、毎回付近の廊下まで聞こえる程の大きさで「ヨ〜ソロ〜〜」って叫ぶ奴だぞ? 他にも女のクセに数々の武勇伝を残す超のつく変人だぞ?」 冴えない顔の男は最初、一応忠告するくらいのつもりだったが、予想通りとは言え、話を全然聞かない佐藤にカッとなってオススメできない理由をこれでもかと並べた。 「個性的でいいじゃないですか……美人だし」 ”先輩の心、後輩知らず。”といった感じに、やはりというか聞く耳を持ちそうにない佐藤を見て、男はさっきよりも大きなため息をついた。 「……もういいから、お前着替えて来い。一時間目の授業に遅れるぞ」 選手ではなく、マネージャーだった男は体操服だったが、選手故に自分より着替えに時間がかかりそうな水着の佐藤に早く着替えるように指示した。 「うっは、やべ! もうこんな時間か! だから朝練はヤなんだよぉ〜!」 佐藤は着替えを指示されて時計を見ると尻に火をつけられたようにあわてて更衣室へ走っていった。 佐藤よりも時間に余裕のある男は、慌てて更衣室へ駆けていく佐藤の背中をぼんやり見つめながら一言つぶやいた。 「男なれど、佐藤だけにスイーツ(笑)とはこれいかに……」
――時は冬らしい木枯らしの吹く放課後。 場所は女子更衣室。 思春期男子ならばその単語を聞くだけで半数以上がやましい想像や妄想にかられるであろう魅惑の園。 思春期男子にとっては魅惑の園のはずのその場所は、現在浮気現場に恋人がおしかけてきた時のような、まさに修羅場のような緊張感に包まれている。 その空気の中に男子が四名。女子水泳部員全員に囲まれる形で立っている。 囲んでいる女子が全員、特攻服とかなら間違いなくリンチが始まるので先生と警察と救急車を呼ばなくてはいけない…と、一般人なら誰でもそう考えるであろう、そんな雰囲気。 「さぁて、あんた達! この内の何人かだけかかも知れないけど、なんで呼ばれたのかわかってるんでしょ?! 面倒なのは嫌いなの! さっさと白状してもらえるかしら?!」 男子を囲んでいた女子水泳部員の一人、ポニーテールとその髪を束ねている白のリボンが印象的な女の子がその装飾とは裏腹。声にドスをきかせ、世にも恐ろしい形相で男達を睨みつける。 「説明されてないのにわかる訳ねーだろ! この男女!」 「そ〜だよ〜このおとこおんな〜」 「まったくですよ! この男女!」 「バカじゃねーノ?! この男女!」 この状況にも物怖じしていない肝っ玉の座った男四人が、白いリボンの女の子に文句を言う。 メキィ!! 四人が口々に文句を言った次の瞬間、何か大きな音が鳴ったかと思ったら、白いリボンの女の子の横にあったロッカーが一つ、彼女の突きによってブーメランの形にされていた。 「この……花も恥らう乙女の……水島瑞希《みずしまみずき》が……男女…………ですって?」 水島瑞希と名乗った女の子は手をグリグリさせているのか、彼女の拳が叩き込まれている部分からギリギリと金属が捻じ曲がる音がしている。 そして、拳を叩き込んでいる彼女の表情の恐ろしいことこの上なく、さながら白いリボンのついた般若のようだ。 そのパワーと言い、迫力と言い、男達が男女と言うのにも頷ける。 「いや」 「こちらの〜勘〜違い〜」 「でした」 「ヨ」 だが、さすがに肝っ玉の座った四人でも白いリボンの般若の前では卑屈になるしかなかった。 「コラコラ瑞希。それではやっている事が男どころかゴリラ以上ではないか。それに実際、何もわからないで呼ばれている可能性はあるんだ。呼んだ理由の説明くらいしてやらぬか」 恐ろしくて誰もが声をかけるのをためらっていた般若瑞希に今朝の美人、――佐藤が熱視線を送り、冴えない顔の男が全力でオススメしなかった美人――女にしてこの高校の水泳部を統括する部長、鳳貴子《おおとりたかこ》が怖気ることなく注意およびツッコミをいれた。 「うぅ……それもそうね…………」 瑞希は貴子に言われるのは不本意だが、その通りなので頷くしかなかった。 「そーだぞ! ゴリラ!」 「それくらいわかれヨ! ゴリラ!」 男達は自分達の言いたかった事を代弁してくれた上に般若をしおらしくさせた救世主《メシア》の言葉に各々同意の声をあげるも、再び瑞希に睨まれると押し黙った。 「わーった! わーったわよぉ、もう。説明ね! 説明……」 瑞希は折れたロッカーを手からはずし、テキトーな所に横たわらせながら、すご〜〜〜く面倒臭そうに貴子の意見を聞き入れた。 「今朝ね、この女子更衣室に下着ドロが入ったのよ。ハイ、以上! これでわかったでしょ」 瑞希はやはりすご〜〜く面倒くさいのだろう。簡潔というより投げやり気味に男達に告げた。 「ちょっと待ってくださいよ、それにしてもなんで私達だけが疑われるのですか?」 「そ〜だよ〜〜」 男達は瑞希の投げやりな説明だけでも十分自分達が呼ばれた理由はわかったが、だからといって自分達だけが疑われるのに納得がいくはずもない。 「っそぉーこでよっ!」 瑞希はその反応を「待ってました」と言わんばかりに目を輝かせ、大声をだして男どもを静めた。 「下着を盗まれたのは、仏利《ほとり》ちゃん、礼渡《れいわたり》ちゃん、平口《ひらぐち》っちと、貴子の四人」 「ふーん……、で?」 瑞希が語りだすと、男達もそれに相槌をうって聞いた。 「まぁ、貴子はいつもの狂言とか、やけに手の込んだボケっていうセンもあるし何よりもどうでもいいのからこの際考察から除外して……」 「ちょっと待て、私だけ除外とは納得いかぬぞ」 当然不服と、失礼なことを言う瑞希に貴子が食い下がる。 「だって、どうせあんたのことだからプールの排水溝につまってたとか、気づいたら校旗と一緒に揺れていたとか、そんなのを見つけたあたし達の反応見て遊ぶつもりなんでしょ?」 瑞希はやれやれと、両手の平を上にあげて首を横にふりながらドライな反応をする。 「ふむ……その手があったか…………」 瑞希はこの貴子の反応を見て「あ〜やっぱり」ってな感じに呆れ、ため息をついた。 「話を戻すわね」 一度変な方向にズレたが、貴子の扱いに慣れている瑞希は一言で話題とテンションを元に戻した。 「とりあえずね、今回下着を盗まれた三人(すでに貴子は除外)の共通点を考えてみたの。そして二つの大きな共通点を見つけたわ」 女子更衣室はすっかり瑞希探偵の世界に染まり、みんなは瑞希の話を聞くなりうんうんと頷いている。 「まず一つ、身長が低い。そして二つ目、……言っちゃあ悪いけど年齢のわりに胸の発育が悪いわ。この二つから導き出される性癖と言えば――!」 ここまで言われると言われずともほとんどの人が気づいているのだが、茶々を入れるような野暮な事をする者はいなかった。 瑞希は無意味にタメを作った後、探偵が犯人を指名するように力いっぱい前方を指さして宣言した。 「――ロリコンよッ!」 まったくもって簡素な推理だが、その空気に呑まれたのか、数人が「お〜」と感嘆の声をあげた。 「じゃないとあたしのが盗まれなかったことの説明がつかないわッ!」 先までそこそこいい感じだっただけに、この一言で女子部員全員がコケた。 「なるほど、そういうことですか」 「それじゃあ〜疑われても〜、しかたな〜いね〜」 「納得するんかーい!!!」 なぜか納得していた男達に黒縁眼鏡の女子部員が描写文章も割り込めないほどの電光石火でツッコミをいれた。 「ふっ、そりゃあ納得するとも!」 「何故ナラ俺達ハ!」 次の瞬間、どこからともなく聴こえてきたほら貝の音に合わせて四人はフォーメーションを組んで動きだした。 「貧乳好きのっ! 今井です!」 ジャーン 「ブルマー好きのぉ〜愛留ぇ〜」 ジャーンジャーン 「スパッツ好きノ! 不和ァ!」 ジャジャン 「そして下着好きの花井!」 ズバーン 「「「「四人揃えば、ロリコン四天王!!」」」」 ドカーン!
四人がそれぞれ名乗りをあげてポーズを決めると、どういう仕組みなのか、後方で爆発がおきていた。 「そして私が水泳部部長の鳳だ!」 ズキューン! 「はいはい、あんたは張り合わなくていいからねー」 いつの間に用意、および移動をしたのか。ロリコン四天王と一緒にポーズを決めた貴子を瑞希が元の位置までズルズルと引きずって行った。 「やーだー! 私は部長なんだからもっと喋りたーいー! 目ー立ーちーたーいー!」 「わかった! わかったから! じゃああの四人を問い詰める役、任せるから!」 瑞希は、引きずられながら急に推定年齢五歳のような駄々をこねだした貴子に取調べ役のバトンを渡す事でなだめることにした。 「オホン! では、今井一生《いまいかずき》、愛留貴雄《あくとめたかお》、不和五弥《ふわいつや》、花井小助《はないこすけ》以上四名。そんな訳なので少々話を聞かせてもらおうと思うのだが」 貴子はついさっきまで駄々っ子をしていた人間とは思えない豹変ぶりで取り調べを始めた。 「とりあえずだ…………カツ丼食うか?」 「早いわー!!」 貴子の頭に瑞希のチョップが炸裂した。 「ぬぅ。なんだ、またまたのダイエット中でお前は食えないから怒っているのか?」 「ちょ、ちょっと! またまたとか人が何回もダイエットに挑戦してるみたいに言わないで! ごごご、誤解されちゃうじゃない! ……じゃなくて、カツ丼出さなくてもさっき名乗りをあげた時、最後の一人にバッチリ怪しいのが一人いたでしょーが!」 瑞希にそう言われると、花井はビクッ! っと、一瞬身を縮めた。 「なに? 最後と言うと私か?」 「確かに変な名乗りあげたのあんたが最後だけどあんたいつの間にロリコン四天王になったのよ! 違うでしょ! 小助! 花井小助でしょが!」 貴子のしょうもないボケに瑞希は怒涛の勢いでツッコむと、息を切らして肩を上下させていた。 「ななな、なんだよ! それじゃあ瑞希は俺が犯人とでも言うのかよ!」 当然ごとく、花井は反論する。 「ふーん、違うのぉ?」 「バッカだなぁ! ミステリーとかでは一番怪しい奴は犯人じゃないってセオリー知らないのかよ!」 瑞希に冷ややかな眼差しで聞かれると、花井はそんな風に言い返した……が! 残念ながらこれはミステリーでもなんでもないのでそんなセオリー関係ねぇ! とばかりに花井が犯人だったりする。 「瑞希、大丈夫だ。私の中はすでに犯人の目星はついている。少しふざけた件についてはセリフを増やしたかった私の出来心だ、許せ」 「ま、まぁそれならいいんだけど……もう! さっさと終わらせてよね!」 なんだかんだで瑞希は貴子を信頼しているようで、貴子が制すると瑞希は大人しく引き下がった。 「さて、先程犯人の目星はついているとはいったものの、決め手がない。なので犯行のあった朝のアリバイでも各々聞かせてもらおう。まずは花井殿からだ」 先程までのおふざけが嘘のような、それらしい空気に少しのまれながら花井はおずおずと話だした。 「き、今日の朝は早く登校したけど、腹が痛くなってね。予鈴まで人気のないトイレで用を足していたよ」 もちろん嘘の証言だが、(収穫物を堪能するために)トイレにいたという部分は本当だし、何よりもバレるわけがないと思った花井はどもる事なく言い切った。 「そうか。用を足す時はちゃんと気合を入れたか? ヨ〜ソロ〜〜ってな」 「そんな気合の入れ方するか!」 先程まで自分が呑まれるような空気を作っていたクセに、急にふざけた事言い出したので花井は少し腹を立てながらツッコんだ。 「そうかぁ。イイモノなのだがなぁ……残念だ」 「たーかーこー」 またしてもふざけている貴子に瑞希がドスのきいた声で注意した。 「わかっている。花井殿、アリバイとは関係ない話だが、最後に一つ。その首に巻いているのは?」 花井は予想外の質問に今までで一番動揺した。 貴子になにかと聞かれたものはマフラーだった。 そのマフラーは花井が下着を盗みに入った時、出来心でついでに盗んだものだった。 前々から、とあるしがない理由でマフラーが欲しかった花井が更衣室で見つけた際、白一色でシンプル(ありがち)なデザインなのでわりと多くの人間が持ってそうだったし、名前も書いてないのでバレないと思って一緒に持ち出したのだ。 「そういえば小助、あんたこんなマフラー持ってたっけ? しかもタグ無しって……手編み?」 貴子が指摘すると同時に瑞希は花井の首に巻かれているものを調べ始めた。 「うっせーな、昨日買ったんだよ、昨日!」 そう言いながら自分を無理やり引っぺがした花井を、瑞希はジト目で見た。 「なーにー、ロリコンのクセに女の子からそういうのもらえるんだー」 「だから! 昨日買ったんだ! タグは自分で取った! それにもらい物だとしてもお前には関係ないだろ!」 花井にそう言われると、瑞希は口を尖らせて拗ねた。 「なによぅ、関係ないって……」 「ん? 小助? 瑞希は花井殿と親しい間柄だったのか?」 事件にはまるで関係ないが、気になったので貴子が瑞希に尋ねた。 「あ? え? え〜っと、実は家がご近所さんでね〜……小さい頃から家ぐるみの付き合いがちょくちょくと……あはははは……」 なんでもない質問だったのに、瑞希にしては珍しく動揺していた。 「って! そんな事はいいから! 取調べの続きでしょ! 続き!」 貴子はこんな瑞希の動揺する様を見てもうちょっとイジりたくなったが、またの楽しみに取っておく事にした。 「そうだな。花井殿はトイレで、後の三人は今日は遅刻だった……と」 「いや、我々まだなにも言ってないんですけど。しかも遅刻してないですし」 ずっと放置されてさすがに寂しくなっていたロリコン四天王の一人、今井が貴子に物言いをつける。 「って事で犯人は花井殿! 君だ!」 今井の物言いは見事にスルーされ、犯人の花井が見事に言い当てられた。 「な、なんだよ。何を証拠にそんなこと言ってるんだよ」 見事に犯人と言い当てられたが、まだ言い逃れる余地はあると判断した花井は戦闘態勢を崩さない。 しかし、そんな態度の花井だが、貴子は先程のどこかで確信を得たのか、余裕があるようだった。 「花井殿、その首に巻いているモノだが……」 貴子は再び例のマフラーに話を向けた。 「だから、このマフラーは昨日買ったんだって!」 その一言を聞いて貴子は笑みを浮かべた。 「残念だが、君は勘違いをしている」 「な……?!」 貴子の一言に室内はざわめきだす。 「それはマフラーではないのだよ」 「じゃあ、なんだってんだよ……」 誰が見てもマフラーのそれを貴子はマフラーではないと言い切った。 ではなんだというのだろう? 室内の人間は次の一言を聞き逃すまいと静まり返った。 「それは…………」 そして誰もが固唾を飲んで見守る中、それの正体が明かされた。 「それは…………今朝盗まれた私のふんどしだ!!!」 貴子の一言で部屋の空気が固まった。 「私のふんどしだ!」 あまりにリアクションがないので貴子はもう一回言ってみたが、みんな固まっていて反応がない。 「私がふんどしだ!」 今度はボケて言ってみたが、やはり反応がなかった。 「お前もふんどしか?」 貴子はそう言って近くにいた黒縁眼鏡の女の子のスカートを捲くり上げた。 「なにすんじゃーい!」 白の下着がこんにちはしたところで、さすがに我に返った黒縁眼鏡の女の子が貴子にアッパーをお見舞いした。 そしてアッパーをくらった貴子が吹き飛んで物に当たって物凄い音がした。 その音で更衣室にいたみんなは我に返った。 「ちょ、ちょっと待て。そもそも名前も書いてないのになんでお前の物だって言えるんだ……? ってどうした?」 我に返って言い逃れをしようとしたら、なぜか地面に這いつくばっていた貴子に驚きながら花井が言った。 「タ、タイガーアッパーカット……」 貴子は花井の言葉を聞くと、変なうめき声をあげながら立ち上がった。 「あたた……花井殿、名前なら書いているではないか」 「は? ど、どこにだよ」 「ほら、ここ」 そう言って花井に近寄り、ある部分を指差したが貴子が指差した場所には黒い点があるだけだった。 「これはただの汚れだろが」 「そうねー、ただの黒い点にしか見えないよ?」 花井と黒縁眼鏡の女の子が指差された場所を見て「これのどこが?」といった表情をした。 「ふふ、甘いな……」 それを見て貴子は得意そうに笑った。 「これを使えば見えるのだよ!」 こう言って貴子が懐から顕微鏡を取り出した。 「いや、どこに入ってたんだよ……」 「よし、こうしてこうすると……ほらな」 「…………」 花井のもっともらしいツッコミはスルーされて貴子が花井の首からマフラー(ふんどし)を奪い取ると、顕微鏡にセットした。 「どれどれ……あ、ほんとだ」 「なんだって?!」 黒縁眼鏡の女の子が顕微鏡を覗いてそう言うと、花井は自分も顕微鏡を覗いて確認した。 「おいおいマジかよ……」 結果はというと、確かに黒点部分には「天才部長鳳貴子参上!」と、どこぞの公園の落書きのように書かれていた。 「ふふふ、これで言い逃れはできんな」 貴子にそう言われると、花井は無言で悔しそうに頭を掻いた。 「くっそ! なんで毛糸なのにふんどしなんだよ!」 「あたたかいからに決まっているだろう!」 なぜか貴子が偉そうだった。 瑞希はそんな「ふぅん」と鼻を鳴らしている貴子の前を横切り、花井の正面に立ったと思ったら床に膝をつき、制服の胸のあたりをぎゅっ、と掴んで花井を見上げた。 「なんで……なんでこんなことしたのよ?!」 「なんでって……!」 いつものような悪態をつこうとした花井だったが、瑞希の目尻に涙が溜まっているのを確認すると、その先を言うことができなくなった。 「そうだぞ! 寒かったんだからな!」 なにを思ったのか。貴子はそう叫ぶとスカートをガバッ! っと捲くり上げた。 「おわっ! バカ! お前なにしてんだ! 女がなんの恥じらいもなくガバッ! っとスカート捲くり上げるな!」 彼女のふんどしはまだ顕微鏡にセットされているので色々放送禁止なのは言うまでもない。 「なんだ!? ガバッ! っとではなくズバッ! っとがいいんだな!? ズバッ! っとが!?」 貴子はそう言うと、今度はスカートをズバッ! っと捲くり上げた。 「おま!! ガバッ! っとズバッ! の違いが全然わかんねーよ! ……じゃなくてそんなことすんなって言ってるんだよ! 第一、お前まだノーパンだろが!」 「違う! ノーふんだ!」 「うるせぇ!!」 花井は場違いにもこの時、聞き分けの悪い子供にしつけするのって大変だなと、少し悟った。 「小助はいっつもそう! そうやっていつもあたしを見てくれない!!」 「今の流れであっち見てたらダメだったんですか?!」 花井は非常識と理不尽のツープラトン攻撃に今現在の自分の立場も忘れ、半狂乱とも言える勢いでツッコんだ。 「あーもう! 鳳はともかく、瑞希! お前さっきからおかしいぞ!」 「花井殿、そんなに褒めるな」 またしても貴子がおかしなことを言ってニヤついていたが、キリがないので全員無視することにした。 「小助……小さい頃は年上のスタイルのいい女の人が好みだったよね……」 「そ、それが何だってんだよ……」 瑞希があまりにも真剣に話し出したので、花井は少し混乱しながら答えた。 「だからね、あたし頑張ったんだよ。大きくなって胸も大きくなって、スタイルよくなれれば同じ年だけど振り向いてもらえるかな? って思って頑張ったんだよ」 室内の人間は突然の告白に驚き、言葉を失っていた。 ただ、貴子だけは何か茶々をいれたそうにしていたが、黒縁眼鏡の女の子に取り押さえられていた。 「そして周りの女の子に比べれば体の発育に自信が待てるようになって、ようやく小助にも自信を持って向き合えるようになった。……なったのに……どうして?! どうして小さい子いいなとか言い出すの?! どうして貧乳って可愛いよなとか言い出すの?! それまでと真逆じゃない!?」 「…………」 花井の服を掴みながら泣きじゃくり、花井に自分の想いをぶつける瑞希。 そんなフィクションでしか見れないような光景を周囲の人間はニヤニヤして見守っていた。 そして貴子は後ろで簀巻《すま》きにされていた。 少しの間うつむいて黙っていた花井だったが、何か意を決した表情になると、顔をあげた。 「なぁ瑞希……」 花井の呼びかけで瑞希は涙を拭い、顔をあげた。 「付き合うか」 花井が瑞希の肩に手を置き、瑞希にそう告げると室内に「おおっ!」という声があがった。 「……え? でも小助はロリコンだし、あたしみたいなのは……」 「たしかに俺は小さい子が好きなロリコンだけれども、けどそもそもこんなのになったのだった最近全然相手にしてくれないお前だけど昔は…………あぁもう! そんなんどうでもいい! 付き合うのか!? 付き合わないのか?!」 結局花井が瑞希の問いかけに対する答えを最後まで言い切る前に強引に聞き返しすと、瑞希は恥ずかしそうにうつむいた。 「そんなの……断る理由…………ないじゃない」 答えを聞いた花井は瑞希を抱き寄せた。 それと同時にギャラリーから黄色い悲鳴と、それに混じって――若干三名くらいの男のものと思われる――舌打ちが聞こえた。 そして抱擁が終わり、花井は瑞希から離れると、今回の被害者の三人の前に正座した。 「本当にすまなかった!」 花井は全力で謝罪意を表すと、全力で床に頭をうちつけて土下座した。 被害者三人は正直、全力すぎる土下座にちょっとひいた。 そして、そんなひかれている全力土下座男に寄り添うように瑞希が座った。 「あたしからも三人にお願いするわ。こいつを許してあげて欲しいの……」 瑞希は当初の般若からは想像できないくらい優しく頼んだ。 「みっ、瑞希先輩にそのようにお願いされたら嫌とは……言えないです……」 仏利がなぜか頬を赤らめて言った。 「ありがとう、仏利ちゃん」 瑞希はそのことを気にしないことにした。 「予備もあった。私は最初から気にしていない」 本当に気にしていないのだろう。礼渡は淡々とそう言った。 「礼渡ちゃん……」 「なんやーあとアタシかー」 被害者の残り一人、平口がまるで他人事のようにそう言った。 「悪かった!」 「ちょ、ちょっと! ええって! そこまでせんで」 改めて土下座しなおした花井を平口はあわててとめた。 「この流れでアタシだけアカンって言うてもアタシだけ悪者扱いされるだけやないの。それにさ、ホンマのとこ言うと色気ないって言われまくっとったから、瑞希とかやなくて、アタシのが盗まれたのにちょっと優越感をさ、感じたりしてたしな。嫌は嫌やったけど、謝ってくれたし、それでええよ」 平口はそう言いながらケラケラ笑っていた。 「三人とも、ありがとう」 花井はもう一度頭を深々と下げた。 「下着は後であたし方から返すね。今は他にも男がいるし」 瑞希の言葉に頷く被害者三人の後ろで男三人が残念そうな顔をしていた。 「あら、一件落着かしら?」 その光景を見て、黒縁眼鏡の女の子は微笑ましそうに言った。 「ちょっと待った! 誰か忘れてはおらぬか?!」 「おわっ!? 貴子?!」 せっかく解決ムードだったと言うのに、ややこしいところで後ろで簀巻きにされていたはずの貴子が「真実はいつも一つ!」なポーズで瑞希の横に現れた。 「私だって盗まれたのだぞ!! ふんどし!!」 地団駄を踏みながら訴える貴子に誰もが苦笑いを浮かべずにはいられなかった。 「あーはいはい。悪かったな」 花井はさながら子供のおねだりを流す親のようだった。 「おい! 花井殿! 先ほどの三人とは扱いが違いすぎないか?!」 「気のせいだろ」 「そうか、気のせいなら仕方ないな」 貴子は噛み付いたわりに、この一言で納得したようだった。 貴子を言いくるめた花井は、そのまま立ち上がって瑞希の肩を掴んで話しかけた。 「それよりさ、瑞希。次……いつ空いてる?」 「え……?」 いきなり肩なんて掴まれ話かけられたものだから瑞希の口からは素っ頓狂な声が漏れた。 「いやさ……俺達にはやることがいっぱいあるだろ……?」 さすがにそんな反応された上、こんな内容の話をしようとしたのが恥ずかしかったのか、花井は顔を少し逸らしながら言った。 「ちょ、ちょっと……やだ! ヤルことだなんて……そんなみんなの前で……んもう! まだ早いでしょ!」 バチン! 「あふぅ」 瑞希はなにを想像したのか。顔を沸騰させると同時に景気のいい音を鳴らしたビンタを花井に放った。 そのビンタの恐ろしいことに、花井はそのまま更衣室の壁に彼の型どった穴を残し、はるか彼方まで飛んで行った。 「そりゃあいつかは通る道なんだろうけど、心の準備が……」 瑞希は花井が飛んで行ったのにも気づかずにトリップしていた。 「おい、あれ生きてるのカヨ」 「と言うより、彼女の怪力は最早人間じゃないでしょう」 「お星様〜だ〜ね〜」 残された今や空気同然だった四天王は、飛んで行った花井を見て他人事のように言っていた。 「あ、小助! 待ってよ!! 恋人になった日くらい一緒に帰ろうよー!」 ようやく花井が鳥人間になっているのに気づいた瑞希は、これまた人間離れしたスピードで自分と花井の荷物を持って飛んで行った花井を走って追いかけて行った。 それを見て黒縁眼鏡の女の子は苦笑いを浮かべた。 「貴子、いいの? 先生に怒られないかなぁ……?」 そんな彼女の問いに貴子は悪そうな笑みを浮かべ、楽しそうに答えた。 「かまわん。それにどの道、教諭の相手をするのはお前だ」 なぜそうなるのかはよくわからなかったが、黒縁眼鏡の女の子は身の危険を察知した。 「え?! ちょ……?! どういうこ…………ちょっと瑞希!! 待ってよー!!」 そして不条理なとばっちりを回避するために慌てて瑞希を追いかけていった。 なんだか今の状況について行けず、ほとんどの人間がカカシと化している中、花井の型に空いた穴から見える空を見ながら貴子は鼻を鳴らした。 「ふぅん。恋……な……」 「あのー、もう帰ってもいいですか……?」 今井の言葉は、空を見つめる貴子に小一時間届かなかった。
――翌日の朝。 いつものように練習に励む水泳部員達。 今日もプールは部員達の活気で溢れていた。 「っぷぁ!! てやんでい! これでどうでえぃい!」 勢い良く水中から顔を出した佐藤はなぜか江戸っ子口調だった。 「おぉ! コンマ二秒縮まってるぞ!」 「うっは! マジっすか!」 「あぁ。頑張ったな!」 昨日と同じく、佐藤のタイムを計っていた冴えない顔の男は水に浸かったまま喜ぶ佐藤の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。 「先輩! 今日はこれであがっていいですか?!」 人の言うことはあまり聞かないが、練習熱心な佐藤にしては珍しい提案に男は少し驚いた。 「ん? ちょっと早いけど……なんかあるのか?」 実際、今日も佐藤は頑張っていたので特に却下する気もないが、男は少し気になった。 「へへへ……今日からふんどしにしたんですよ。あれって慣れてないと時間かかるんですよね〜」 「…………はぁ? なんでまたお前」 どこぞの誰かのような突拍子もないイメチェン(になるのか?)をしたと言い出した佐藤。 男はその突拍子もなさに少し呆れた。 「なに言ってるんですか〜時代はふんどしですよ、ふんどし。それじゃ、お疲れ様ですっ!」 そう言うと佐藤は勢い良くプールから出て更衣室の方へ走っていった。 そんな佐藤の背中を見ながら男は溜め息をついた。 誰の影響でふんどし着用など始めたのだろうかなどと考えてみたが、どう考えても例の人間のせいとしか思えなかった。 「たぶん、鳳だろうな……」 男はぼそっとつぶやきながらポケットから一つ、便箋を取り出して先程よりも大きな溜め息をついた。 便箋は白くシンプルでそれだけだと素っ気ない物だが、封をしているシールがハートだと言うことだけで内容は見ずとも素っ気ない物ではないことが容易に想像できる。 「さて、どうすっかな……これ…………」 そしてその便箋の一隅には「鳳貴子」と書かれていた。テーマ:ブログ日記 - ジャンル:ブログ
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ふひひwww
おれ自重wwww
おれ自重しろwwwww
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>>ぁいる
気づいたかwwww
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4天王ガチ四天王じゃねぇかwwww
でもハナコ以外空気ワロスwww
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>>らいる
ネタばらし乙wwww
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